東京藝術大学 大学院 音楽音響創造

要旨

ロバート・マーク・シェリガ
戦後の現代音楽における集団即興演奏の方法論

本論の主な目的は、20世紀の現代音楽における集団即興演奏の方法論の役割を検討することである。この研究は1950年~1970年という既存概念に向き合った新政治意識を持ち、発達したテクノロジーと科学によって新たな表現形式が生み出された時期に焦点を当てる。

当時の豊かな社会・政治的な環境の中において、偶然性、不確定性、エレクトロニクスなどはシュトックハウゼンとケージたちによって用いられていた。また、60年代から新たなジャズのオーネット・コールマンとジョン・コルトレーンたちの「フリージャズ」のような集団即興表現が流行っており、そこから、2つの音楽的な運動を融合したミュージシャンとグループが増えるようになった。本論の第一章(「背景として現代音楽」)では、この不確定性の音楽、ライヴエレクトロニクス、またフリーインプロヴィゼーションという3つの音楽形式を紹介する。

第二章(「集団即興演奏の代表的集団」)では、日本・アメリカ・ヨーロッパという3つのカテゴリーに分類し、重要な活躍していた集団即興演奏を中心とするグループの歴史、活動、方法、思想を説明する。

第三章(「分析」)では、集団即興演奏と現代音楽の関係性を分析する。特に、シュトックハウゼンの60年代「直感的音楽」のような合奏団、当時のアナログテクノロジー(テープ・増幅・マイクロフォン)の発達したもの、また抽象表現主義の影響を考察していく。

最後(「結論」)、今までの研修・分析したものをまとめ、現代音楽における集団即興音楽を形作った重要な原因を述べる。