東京藝術大学 大学院 音楽音響創造

要旨

砂守岳央
インターネットにおける聴取実態の調査

近年、インターネットを通じた音楽聴取については日進月歩の勢いで進歩し ており、いまや音楽聴取体験において大きな割合を占めるようになっている。 本論文では、インターネットを通じたアンケート調査とリスニングテストによ り、聴取者の再生環境における音響特性について調査および考察を行った。

インターネットを通じた視聴において、使用される再生環境は多岐にわたっ ていることが予想される。PCにおいては、従来のCDプレーヤーなどと比べ て商品展開の幅が広い上、外付けのスピーカーやイヤフォンを使用されるケー スも多いからである。このことは、現在、音楽制作の現場において重大な問題 となっている。インターネット向けの制作の場合、視聴者の環境を想定するこ とが難しいからだ。本論文の調査は、そのような、制作現場において有用な指 針を作ることが目的である。

そこで、今回の調査では、ネット上でのプログラムを使用した、規模の大き な調査を行うこととした。被験者の募集と調査の実施はともにWeb上で行わ れることとなった。まず予備実験とプログラムの動作チェックを兼ね、2009 年11月28日~11月29日、東京藝術大学音楽環境創造科に所属する録音 専攻の学生と教員計18名向けに調査を行った。その結果を検討し、聴取実験 を調整した上で、2009年 12月5日~12月7日、一般向けの調査を行った。 最終的な被験者数は320名であった。

調査にあたり、FLASHを用いた調査システムを設計、実装した。調査シ ステムはアンケート、低音域リスニングテスト、高音域リスニングテストの三 部から構成される。リスニングテストは、ピンクノイズとローパスフィルタ、 ハイパスフィルタを利用して、低音域、高音域が被験者の環境においてどの周 波数帯域まで再生されているかを調査するものである。調査には極限法が用い られた。その結果はメールを利用して収集された。

収集されたデータをチェックし、問題のあるデータが取り除かれた。これ により、データ数は、アンケートと高音域テストが319名、低音域テストが 269名となった。

アンケートの分析結果により、被験者層の特性が明らかになった。この際、 被験者の使用している再生環境を「ヘッドフォン型」「内蔵型」「外付け型」の 三型に分類した。それぞれの割合は以下の通りとなった。

・ヘッドフォン型・・・40%
・内蔵型・・・39%
・外付け型・・・21%

リスニングテストの結果は、分散分析と箱ひげ図の作成によって分析された。 その結果、以下のことが明らかになった。

・低音域の再生、聴取には環境によって大きな差がある。
・これには、再生環境のタイプの違いが強く影響している。
・低音域の再生、聴取に被験者の年代はほとんど影響がない。
・高音域の再生、聴取には環境による差は少ない。
・再生環境のタイプの違いの影響は確認されなかった。
・高音域の再生、聴取には被験者の年代の影響が見られた。

インターネットを対象とした制作にあたっては、低音域の扱いに注意が必要 であるということが、以上から示唆される。また、多くの被験者を募ることに 成功したことから、インターネットを通じた被験者募集には非常には大きな可 能性があるということも明らかになった。


SUNAMORI Taketeru
Research on condition of the audio listening via the Internet

These days, the audio listening via the Internet becomes quite popular. In this research, we investigated acoustic condition of listeners via the Internet with questionnaire and listening tests.

Conditions of the audio listening via the Internet should have wide range, because people have a lot of choices to play audio with personal computers (PCs). They can use internal loudspeakers, headphones or external loudspeakers. Recently, it becomes a large problem in the field of sound production. Producers and engineers can’t imagine how acoustic conditions of their customers are. The aim of this research is to make criteria in this field.

A FLASH program was designed to collect data via the Internet. Program is composed of three parts – questionnaire, low frequency listening test, and high frequency listening test. The purpose of listening tests is to find out how low or high subject can be heard with gears they usually use. Pink noise and LPF/HPF used to make test signals. Test sequences follow “Method of Tracking”.

In analysis, we classified types of devices in three groups.
(I)Internal Loudspeakers 40%
(II)Headphones (includes earphones) 39%
(III)External Loudspeakers 21%

Collected data of listening test analyzed with ANOVA and Box-plot. As the result,

  • There is a major differences in low frequency reproduction.
  • There are many correlations between low frequency reproduction performance and the type of devices.
  • No relationship are found between low frequency listening ability and age of listeners.
  • Differences in high frequency reproduction is much smaller than that of low frequency.
  • Correlations between high frequency reproduction performance and the
    type of devices are also small.
  • There are correlations between high frequency listening ability and age of listeners.

To conclude, low frequency sound should be treated with special attention in the production purposed the Internet. And also, we can say data collection via the Internet have great possibilities.