【公開講座】人工知能と作曲

日時:2019年2月19日 18時 ※事前予約なしでご来場いただけます。
場所: 東京芸術大学 音楽環境創造科 千住キャンパス、第7ホール

〒120-0034
東京都足立区千住1-25-1
http://www.geidai.ac.jp/access/senju

リンク:http://gotolab.geidai.ac.jp/AIandCompositionJ/

 

プログラム:
人工知能と作曲(前半)

人工知能と作曲に関するプレゼンテーション(後藤英)

後藤英
Duali II (世界初演) リコーダーと弦楽四重奏(1vn Kamei)

顧昊倫
月面 II(世界初演) リコーダーと弦楽四重奏 (1vn Kamei)

満潔
Enchanted(世界初演) リコーダーと弦楽四重奏 (1vn Kamei)

===休憩===

リコーダーと弦楽四重奏のためのコンサート(後半)

糀場富美子作曲
フラグメンツ2(2018) リコーダーと弦楽四重奏 (1vn Yohanan)

サルヴァトーレ・シャリーノ
風に乗って運ばれた対処地からの手紙(2000/2008)リコーダーソロ

細川俊夫作曲
断章 II (1989/2012 リコーダー版) リコーダーと弦楽四重奏(1vn Yohanan)

演奏者

鈴木俊哉/リコーダー
亀井庸州/ヴァイオリン
ヨハナン・ケンドラー/ヴァイオリン
安田貴裕/ヴィオラ
多井智紀/チェロ

 

概要:
人工知能、つまりAIの現状としては、車の自動運転、自動翻訳機などに用いられるのは当たり前となり、更にはAIがチェスの世界チャンピオンに勝つほどになってしまったニュースも既に過去の話になってしまった。また、音楽にも使われるようになり、Googleの作曲家AI「Magenta」は最も知られている例の一つである。歴史的な作曲においては、十二音技法からトータル・セリエリズム、更にはストカスティック・ミュージックなどが存在した。更にはフラクタル・ミュージック、ジェネティック・アルゴリズム、ファージー理論を用いた音楽も80年代には流行した。音楽データーを全て自動生成するアリゴリズミック・コンポジションは、やがて作曲のスタイルに合わせてライブリーを制作し、作曲の必要に応じて柔軟にプログラミングをする作曲支援プログラミングに移行していった傾向が見られる。これらはツールとして発展したのみならず、何らかの形で音楽の発展に、または作曲方法に影響を及ぼしたのは事実である。一方で、近年頻繁に語られている、AIのディープ・ラーニングなどは作曲の進歩に何らかの影響を及ばしてくれているのだろうか?ひょっとしたら、過去に存在した音楽を分析して、それの再編成ばかりしたものを、 流行と関係させて大げさに語っているだけではないか?東京芸術大学、後藤研究室では今年度、「AI と作曲」というテーマをもとに研究が行われた。このようなAIにおける音楽の扱い方を少し斜めから見るところから始まった。作曲家の立場で、あくまでも音楽の発展のためにAIがどのような使われ方をすべきかのみ焦点を当てて研究を行なった。そこで AIの技術だけに関する開発、理論的な研究は主眼ではない。また、AIによって作曲を行い、それを楽譜化して人間の奏者に演奏してもらうことにも限定した。そこでは同時にコンピューターがステージ上で用いられることはないし、インターネットやサウンド・デザインなどの他の要素を使用することも全く避けた。「純粋に音楽のみのためにAIを用いてどのような新たなアイデアを見つけて作曲できるか?」、のみに徹するためである。随分、時間をかけていろいろツールを試してみたが、依然としてディープ・ラーニングなどは作曲の進歩に何の影響を及ばしているのだろうかなどの疑問は持ち続けている。また現在、AIの一部として語られているアルゴリズムも、それを用いて、これまでのアルゴリズミック・コンポジションを本当の意味で超えられるのだろうか?このような根本的で率直な疑問は必ずしも否定的な意味ではなく、むしろ新たなアイデアに結びつけるための建設的な意味である。しかし、コンサートは答えを述べるための完結編を目的としておらず、これから具体的に新たなアイデアへと導くきっかけとするためである。そこで、技術的AIの目的や、既に行われているディープ・ラーニングの音楽を求めている方には随分、趣旨が異なってしまうものになってしまうことだろう。ここではAIを用いて何らかの形で芸術の発展を試みることが目的なのである。

 

プログラムノート:

後藤英
作品名:Duali II
AIで作曲する(または厳密には自分に取って代わって作曲をしてもらう)にあたって、あえて人間の脳で考えて作曲をする行為と対比することを考えた。そこで、どうしても人間にはできないことで、AIにできることは何かを優先に考えた。通常、作曲は一人で行うものであり、複数で行うことはまずない。ここで言う意味は、部分に分けて複数の作曲家がそれぞれのセクションを分担しながら作曲することや、一人が作曲してもう一人がそれを編曲するような意味ではない。趣向や技術が全く異なる二人の作曲家が、一つの音楽を感覚レベルで共有しながら同時に作業を行うような意味である。別の言い方をすれば、インターネットのように人間同士の頭や心はケーブルでつなぎ合わせることは当然のことながら不可能である。そこで、言語によるコミュニーションの手段を取るしかない。いささかサイエンス・フィクションの映画のような話ではあるが、もし趣向や技術が異なる二人の作曲家が本当に頭をケーブルでつなぎ合わせて、しかも二人の能力で一つの作曲ができることになれば、多分、相当なことになるだろう。この作品では異なる人格を想定した作曲家、つまり二つの異なる頭脳を想定したAIをコンピューター上で作り、それらの共同作業で一つの作曲をすることが試みられた。ある例で例えるならば、一人は複雑な作曲を試みる人格で、もう一人はクラシック音楽が嫌いな人物、または、一人は斬新な音楽を作曲する人格で、もう一人は音楽に対して興味ない人物、のような対比するよりは全く異なる想定の仕方である。具体的にはAIのコンストレイン・プログラミングで複雑な音楽データーを生成するが、もう一人は強い個性を持ったAIがパターン認識して嫌いな部分をフィルターしていく、その抽出されたパターンをさらに別の人格の相手が評価、学習して、新たにリミックスしていく方法である。

顧 昊倫
作品名: 月面 II
この曲は『月面』シリーズの第二曲であり、破片と粒子をテーマとして書いてきた作品である。自分の居場所と遠く離れていて、放射線だらけの不毛な地。極めて静かから生まれた心の声を音楽になると考えて。
楽音より、もっとノイズのような一定の音高のない「効果音」で表現できる特殊奏法を使い、「効果音」そのものを中心に、音楽全般の構想を立てた。そのため、一部の考えやモチーフが出来た上、人工知能に基づいたOMaxを使って作品構想への手伝いをし、展開させたことである。

満潔
作品名:Enchanted
今回は人工知能と作曲という研究テーマにおいて作品制作を行った。Open Music、Max/Msp、Omax、Audio Sculptといったソフトウェアを使い、作曲プロセスの初期段階における音の構造、作品の構造と関連した自動生成システムや、作品の展開における音楽の自動生成システムを、作曲する過程で色々試してみた。モンゴル民族音楽の録音素材や日本で録音した音楽素材をAI技術と結びつけて作品の中で多様な響きを生み出すことによって、今回の研究テーマとこの作品のコンセプトを実現しようと試みした。

 

演奏者略歴:

鈴木俊哉 Tosiya Suzuki
アムステルダム音楽院卒業。リコーダーを花岡和生、W.ファン・ハウヴェに師事。リコーダーの可能性と技術の開拓に 取り組む。L.コーリ、B.ファーニホウ、L.フランチェスコーニ、原田敬子、細川俊夫、伊藤弘之、野平一郎、S.シャリーノ、湯浅譲二といった作曲家たちと共同作業をおこない、彼等の作品を初演す る。ウィーンモデルン、チューリッヒ新音楽の日、ガウデアムス、ダルムシュタット、ISCM世界音楽の日々、秋吉台、パリの秋、武生、ロワイヨモン、コンポージアム、ヨーロッパ・アジア国際現代音楽祭、クランクシュプーレン、トンヨン、フェスティバル・ア・テンポ、メルボルンR.C.オープニングフェスティバル、ルーマニア国際現代音楽祭、アジアーゴ音楽祭、サントリーサマーフェスティバル、中国-アジア音楽週間、ニュージーランド・フェスティバル、Etching Festival、Melos-Ethos Festival等の音楽祭にソリストとして参加。ヨーロッパ、アメリカ、アジア各地で現代奏法に関するワーク ショップやリサイタルを行う。’02年のダルムシュタット夏期講習会講師。東京都交響楽団、セントラル愛知交響楽団等と共演。また、京都府教育委員会の派遣講師「夢大使」として子供たちにもリコーダーを教え、京都府の各小学校だけでなく、国内や台湾の小中学校でも教える。ソロCD 「Tosiya Suzuki Recorder Recital」はドイツの音楽ジャーナル、音楽と美学協会よりMusic & Ästhetik Interpretationsprize 2003を受賞。他に、名古屋市民芸術祭賞、ダルムシュタット奨学生賞、クラーニッヒシュタイナー音楽賞、中島健蔵音楽賞、創造する伝統賞、佐治敬三賞を受賞。エリザベト音楽大学特別講師。 www.tosiyasuzuki.com/

 

亀井庸州
5歳よりヴァイオリンを始める。2005年よりベルギー王立リエージュ音楽院において、ジャン=ピエール・プーヴィオン、ギャレット・リスト、大久保泉らのもとで欧州の20世紀音楽や即興演奏を学んだほか、各氏とは欧州各都市にて共演。また、2006年と07年にはナミュール国際古楽器講習会に参加し、バロックヴァイオリンの演奏を修得している。2007年より拠点を日本へ移したのちは、引き続き同世代の作品初演活動に携わる。オペラシティコンポージアムシリーズ、サントリーサマーフェスティバル、みなとみらいホールJustComposedシリーズ、武生国際音楽祭などへ出演し、内外の作曲家による室内楽、ソロ作品の初演、再演を中心として活動している。これまでに初演した作品は100曲あまり。また尺八の演奏として、古典本曲の研鑽を中心に、スタジオワークスやオリジナルアレンジなどでの演奏も行なっている。弦楽四重奏として携わった鈴木俊哉リコーダーリサイタルにおいて第14回佐治敬三賞を受賞。これまでにヴァイオリンを七沢清貴、荒井英治、大久保泉、尺八を横山勝也、柿堺香の各氏に師事。

 

Yohanan Chendler(ヨハナン・ケンドラー)
イスラエルのエルサレム生まれの作曲家、バイオリニスト。エルサレム音楽舞踊アカデミーでマーク・コピットマンに作曲を師事。彼の数々の作品は、アスペン音楽祭、キジアーナ音楽、 アジア音楽祭招待,エッチング音楽祭,などの音楽祭において発表される。2017年から作曲家およびバイオリニストとして武生国際音楽祭に招待された。
バイオリン奏者としては主に現代音楽に携わる。アメリカの東海岸を拠点に活動するユーヴェンタス現代音楽アンサンブルのバイオリニストとして活躍する。ダニエル•バレンボイム、クルト•マズア、ピエール・ブレーズ、などの指揮者によって率いられたオーケストラで演奏した経験を持つ他、アルバニー・レコードとニュー・ダイナミック・レコードによりアメリカ現代音楽作曲家の作品を演奏したものが録音された。
ブランダイス大学より音楽理論と作曲の博士号を取得した後、ブランダイス大学、ハーバード大学、クラーク大学で教鞭をとった。作品はベルベン・ミュージックとルシアン•バディアンより発行されている。

 

安田貴裕【ヴィオラ】
1978年生まれ。川畠正雄、山口裕之、三戸康雄、ロバート・ダヴィドヴィチの各氏に師A事。東京音楽大学入学後、奨学金を得て州立フロリダ国際大学へ入学。帰国後フリーランスとしてヴァイオリン、ヴィオラを演奏するほか、同時代の作曲家の作品を取り上げることを主眼に演奏活動を行なう。東京オペラシティ主催の同時代音楽企画「コンポージアム」シリーズ、サントリーホール主催のポリーニ・パースペクティヴなど、ホール企画の演奏会にも多く出演している。KEI音楽学院講師。

 

多井智紀【チェロ】
大阪出身。東京藝術大学にて河野文昭、苅田雅治、鈴木秀美の各氏に師事。在学中より作曲家達と現代音楽演奏グループで活動。以来、世界初演作品数は150曲超。2010年作曲家星谷丈生氏と演奏会企画及び録音レーベル「時の形レコード」を開始。自作微分音オルガンライブ等を開催。チェロの他、ヴィオラ・ダ・ガンバ、自作電気楽器を演奏する。武生国際音楽祭で新しい地平特別賞、next mushroom promotion メンバーとして佐治敬三賞を受賞。