東京藝術大学 音楽環境創造科

音楽音響創造研究分野(西岡ゼミ) 修了作品発表会【終了】

2009年11月22日(日)

千住キャンパス・スタジオ A、第7ホールで西岡ゼミ修士2年生の修了作品発表会を行います。

14時30分開場、15時00分開演(17時終了予定)

入場無料

■スタジオA(3F)

金 惠貞『Anthropology』声を用いたステレオ音響作品

Anthropology(人類学)
― 生物としての人類とその文化を研究する学問。

この作品は人類が今に至った重要なポイントとして、「声」に注目しようという発想から始まった。人間は社会的動物だといわれるが、そのために「人間は‘声を出して、言葉を話して’意思疎通する」というのが根本的条件として必須不可欠であることは反論の余地がない。そして、社会的道具としての「声」だけでなく、音としての「声」、人声という美しい素材に注目した。人はその「声」で喜びを語り、怒り、愛を囁き、歌も歌うのだ。この曲は、3つのテーマで、声だけを素材とした音響作品になっている。最初は「言葉― ALL
OF YOU」、二つ目は「ささやき」、最後に「音声」。

上野 紘史『フォルモンタージュ』5.1chサラウンドのための音響作品

この作品はフォルマント合成された声に聞こえるが声ではない音と実際の人の生声を素材とした、5.1chサラウンドのための電子音響作品である。様々な音の処理や加工/編集をすることによって単なるフォルマントという音の断片だったものが映画における、カットのつなぎ合わせで生じるモンタージュのように、何らかの意味性を生じ人間に訴える音響を作り出す。

田中 文久『もの/おと』4chのための電子音響作品

この作品「もの/おと」は、「空間を音で聴く」ということをコンセプトに、様々な空間でサウンドインスタレーションを行うプロジェクトです。普段気にすることのない様々な物音に耳をすませば、その空間の、アイコンとはなり得ないかもしれない個性的な部分が浮き彫りになるのではないか、という試みです。
今回発表するものはそのデモンストレーションも兼ねて、コンサート形式に構成したものです。歩き回りながら、一緒に物音を立てながら、聴こえてくる音たちに耳をすませてみてください。

■第7ホール(1F)

江口 加奈『coexistence』パフォーマーのための音楽音響作品

演出、構成、作曲、コンピュータ:江口 加奈
出演、振付:〈スタッフスインギング〉鶴 貞浩
〈エアリアルロープ〉松本 真理
〈トランポリン〉佐藤 裕之、大西 祐介、丸山 哲矢、小林 真奈人
〈新体操〉五十嵐 陽平、山根 翔

人は常に「何か」と共存しています。どんな環境においても、人間性を保ち、開花させようとする姿を表現しました。作品は3部構成で、スタッフスインギングでは「人×機械」、エアリアルロープでは「人×人」、トランポリン・新体操では「人×自然」をテーマにしています。1曲目では、曲を通して流れる7音の繰り返しがコンピュータ、チェロが人間、ピアノがその中間に位置し、パフォーマーが人間の能動性を喚起します。2曲目では、人々の様々な感情が交錯する世界と、不安を払拭しようとする祈りが次々と出てきます。そこで必死にもがき、自我を確立させようとするのです。3曲目ではライヴ・エレクトロニクスにより、トランポリンを跳ぶ音を素材に、リアルタイムで音響を生成することで、人間の身体性を直接音楽と結び付けています。これらのパフォーマンス全てに共通する動きである上下運動と回転に対し、音楽はそれぞれ異なった方法でアプローチしました。

協力:沢入国際サーカス学校、稲門トランポリンクラブ、早稲田大学トランポリン同好会、学習院大学トランポリン競技部、社団法人日本トランポリン協会

東 英絵『on the verge of…』ダンス、サックス、チェロのための音楽音響作品

企画、作曲:東 英絵
振付、美術、衣装:酒井 幸菜
出演:〈ダンス〉酒井 幸菜、安達 みさと、道町
麻祐 〈サックス〉山崎 憂佳
演奏(録音):〈チェロ〉木下 通子〈サックス〉山崎 憂佳

“on the verge of…”とは「今にも…しそうな」「…寸前の」、という意味で、“verge”には端、境界といった意味がある。音楽とダンスの関係性を考えてきたが、両者の間には見えない壁や隔たりがあるように感じることがある。交われるようで交われていない境界。その隔たりを狭めるでもなく、遠ざけるのでもなく、ただ、その境界線そのものを意識する作品を目指した。チェロとサックスを事前に録音・編集したものをサラウンド再生。同時にリアルタイムのサックスの演奏をスピーカーからも再生する。