グローバリゼーションによる社会変動において文化の画一化が危惧される中、音楽文化も西洋音楽の圧倒的な影響下での非西洋音楽文化の近代化・発展=西洋音楽化をはじめ、その多様性は急速に失われてはいないでしょうか。
地歌箏曲においても、西洋音楽への同化による近代化・発展を目指す流れは促進されてきました。そのような中、初代 米川文子師(1894〜1995)は、西洋音楽とは異質さが際立つ古典音楽の中に、同時代の社会へ発信すべきものを見出し、演奏・活動に尽力されました。師は、言わば地歌箏曲における「内発的発展」の「キーパーソン」であり、その理念は今日なお、西洋音楽とは異なる音楽の発展概念の模索において示唆に富んでいます。
今回のシンポジウムでは、そうしたオルタナティヴな音への感受性・創造性への一つの手がかりとして、地歌箏曲の音楽とその「発展」を再検討すると同時に、モノカルチャー化を押し進める社会・経済のあり方そのものを問う視座から、グローバリゼーションの矛盾を批判し西洋の発展思想を超える<脱成長>理論で大きな反響を呼んだフランスの経済学者ラトゥーシュの思想とも交叉させつつ、社会・文化の行方を討議します。
シンポジウムに先立つ第一部では、初代 米川文子師へのオマージュとして、古典・伝統からの再創造をテーマに演奏・パフォーマンスを行います。これは私の研究の拠り所の一つであるカルチュラル・スタディーズの歴史的展開に触発されつつ、理論と実践をつなげる試みの一つとなるでしょう。
入場無料/予約不要
日 時
2012年1月21日(土)14:30〜17:30(開場:14:00)
場 所
東京芸術大学千住キャンパス スタジオA(3F)
(北千住駅下車、徒歩約5分)
主 催
東京藝術大学大学院 音楽文化学専攻 芸術環境創造 毛利研究室
佐藤岳晶(毛利研究室 博士課程)
問い合せ
毛利嘉孝研究室:geidai5@gmail.com
(メールの件名に「1/21」と明記の上、お問い合わせ下さい)