地歌箏曲 理論と実践プロジェクト その3
「近世邦楽言語からの創造― 現代へ共振する近世からの音霊を求めて」【終了】

〈地歌箏曲 理論と実践プロジェクト〉は、企画者の研究の発信の場として、第1回以来、第一線で活躍する実演家、研究者の方々をお招きして開催されてきました。第3回の今回は、その最終回となります。

 企画者は、片や西洋音楽を専攻しつつ、同時に近世邦楽の世界に魅了され、その異質な双方の現場の往復の中で、音楽に携わり続けてきました。そこから、音楽文化の多様性の意義をあらためて問い、地歌箏曲をはじめとする近世に由来する伝統音楽が、現代においてなお、奏でられ続けることの意味を考え続けてきました。特に、近世邦楽が独自に育んできたその音楽言語は、西洋音楽と対照する上でも、極めてユニークな特質を有し、グローバルな視野からも、音楽の多様性を証す貴重な音楽文化遺産であると考えます。
 本公演の第一部では、その近世邦楽言語の研究成果を踏まえて創作された作品を、伝統曲と共に演奏します。その創作作品は、本研究に大きな影響を与えた社会学者の鶴見和子氏と作家の石牟礼道子氏のテキストによります。両氏が捉えた現代社会を音に映し出すべく、伝統音楽の枠組みを広げる活動を行う邦楽演奏家、そして、西洋音楽の演奏家の方々にも賛助出演を乞いました。
 本研究のそもそもの企図は、近世邦楽の現場でのフィールドワークと研究室における社会学的省察の接合にありました。本公演第二部では、地歌箏曲のフィールドで御指導を賜りました、地歌箏曲家で人間国宝の二代 米川文子師にご登壇頂きます。研究室での御指導を賜りました社会学者の毛利嘉孝先生との対談を通し、本研究の総評と共に、現代社会学の視座と交差させる中で、伝統音楽の未来への展望へ思いを馳せたいと思います。

開催概要

日時:2016年3月12日(土)15時開演 入場無料(予約不要)
場所:東京芸術大学 千住キャンパススタジオA (足立区千住1-25-1)
入場無料・予約不要
お問い合わせ:jstp_project(at) を@に変えてください。

プログラム

第一部 研究公演  地歌箏曲の音楽言語と創造
箏曲 六段の調  
八橋検校(伝)作曲(17世紀頃)
箏 佐藤文岳晶

地歌 鶴の声 —東日本大震災5年、鶴見和子没後10年への哀悼— 作詞者不詳 
玉岡検校 作曲(18世紀末頃) 
佐藤岳晶 箏手付(2016)
歌・三絃 佐藤文岳晶  
箏 福永真由美

創作作品 天底の秘歌  石牟礼道子 作詩(『天湖』より) 
佐藤岳晶 作曲(2014/2016改訂)
歌・三絃 佐藤文岳晶  
箏 福永真由美  
尺八 設楽瞬山
        
創作作品 萃点 I — 回生の山姥(東京藝術大学大学院音楽研究科リサーチセンター 2012年度委嘱作品)  
鶴見和子 作詩  
佐藤岳晶 作曲(2012/2013改訂)
ソプラノ 盛田麻央  
歌・三絃 佐藤文岳晶  
ピアノ 石塚幸子

第二部 座談 人間国宝 米川文子師に聞く 地歌箏曲の現在・未来
— 「伝統文化」への現代社会学からのアプローチ

特別ゲスト・お話 二代 米川文子(地歌箏曲家・双調会家元)
聞き手 毛利嘉孝(社会学・東京藝術大学准教授)+ 佐藤岳晶(東京藝術大学 博士課程)

出演者プロフィール

米川 文子
地歌箏曲家、双調会家元。近世より続く地歌箏曲の伝承の古格を今に伝える、現代を代表する箏、三絃の実演家、重要無形文化財保持者(人間国宝)。幼少より箏を始め、叔母の初代 米川文子(人間国宝)師に入門後、初代の養女となり、米川文勝之を名のる。初代との数多くの共演の中でも箏曲《五段砧》の演奏は、昭和の代表的名演として歴史に刻まれる。初代亡き後、二代 米川文子を襲名。初代譲りの芸に、独自の芸境の深まりを交え、その滋味深く格調ある演奏は高く評価される。芸術選奨文部大臣賞、日本芸術院賞恩賜賞、紫綬褒章、勲四等宝冠章など受賞多数。くらしき作陽大学客員教授ほか、後進の指導にも力を注ぐ。公益社団法人 日本三曲協会名誉会長、生田流協会会長。岡山県高梁市名誉市民。

福永 真由美
桐朋学園芸術短期大学卒業。在学中、野坂惠子、滝田美智子両師に師事。NHK邦楽技能者育成会39期首席卒業。 2000年度文化庁芸術インターンシップ研修員。NHK邦楽オーディション合格2回。二十五絃箏の為の委嘱曲を含むプログラムでのリサイタル等の演奏活動や学校公演及びワークショップ等の教育普及活動、また、日中韓三ヶ国の民族楽器による オーケストラアジア団員としても活動。絵画や朗読とのコラボレーションの企画も立ち上げている。現在、宮本幸子師に師事。正派邦楽会 大師範。

盛田 麻央
国立音楽大学声楽科卒業、同大学院修了。二期会オペラ研修所第52期マスタークラス修了。修了時に優秀賞及び奨励賞受賞。パリ・エコール・ノルマル音楽院及びパリ国立高等音楽院修士課程を満場一致の最優秀の成績で卒業。第17回日仏声楽コンクール第1位及び竹村賞受賞。第13回東京音楽コンクール第2位など数々のコンクールで入賞。多数のオペラに出演しながら、コンサートソリストや現代音楽にも意欲的に取り組み幅広く活動をしている。二期会会員。

設楽 瞬山
都山流尺八を川村泰山師に師事。NHK邦楽技能者育成会38期修了。演奏活動のほかに、演劇や語りの音楽として、演劇的な内容に深く沿った表現を実現する。これまでに、若村麻由美一人芝居「小宰相身投」、麻実れいの語り芝居「女院出家」、真野響子一人芝居「夢十夜」などの音楽を多数手がける。石牟礼文学の世界も度々手がけ、「言霊 詩・歌・舞−−石牟礼道子・多田富雄 深き魂の交歓」(構成・演出 笠井賢一)東京、熊本、水俣公演などへ出演。

石塚 幸子
東京音楽大学付属高等学校、同大学ピアノ科卒業。同大学院器楽科鍵盤楽器研究領域修士課程修了。第12回彩の国埼玉ピアノコンクール銀賞、第10回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA神奈川大会金賞受賞。高校時代、声楽作品の魅力に目覚めて以来、ニースやウィーンなど海外の講習会に参加。2014年にはイタリアでの音楽祭『SETTIMANA SANTA A BITONTO』でのコンサートピアニスト、オペラ『La Bohème』の稽古ピアニストを務めるなど、国内外で声楽伴奏を中心に演奏活動を行う。

毛利 嘉孝(企画指導)
1963年長崎県生まれ。東京藝術大学准教授。京都大学経済学部卒。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジPhD(社会学)。専門は社会学・文化研究。特に音楽や現代美術、メディアなど現代文化と都市空間の編成や社会運動をテーマに批評活動を行う。主著に『ストリートの思想』(日本放送出版協会)、『文化=政治』(月曜社)、『ポピュラー音楽と資本主義』(せりか書房)など。Inter-Asia Cultural Studies Journal (Routledge)編集委員、北九州国際ビエンナーレディレクターなどもつとめる。

佐藤 岳晶/文岳晶(企画・制作)
幼少より西洋音楽を学び、桐朋学園大学ピアノ専攻卒業、パリ国立高等音楽院作曲技法・理論(エクリチュール)科修了。他方、義太夫節を人間国宝・竹本駒之助師、鶴澤津賀寿師に師事した後、地歌箏曲を人間国宝・二代 米川文子師、米川文清師に師事。師の主宰する「双調会」の名取となり、佐藤文岳晶の名で地歌箏曲の伝承曲の演奏活動の他、自作品の自演も行う。2013年度には、日本三曲協会の三曲新進演奏家研修生として、長唄を今藤尚之師、今藤長龍郎師に師事。西洋音楽と対照された近世邦楽の研究と実践から、音楽の多様性と、そこから見える近世邦楽の特質について、東京藝術大学大学院・音楽文化学専攻(芸術環境創造)修士課程を経て、同博士後期課程において研究を進める。