東京藝術大学 音楽環境創造科

l.AI ve electronicspace > ーAIとライブエレクトロニクスの空間のコンサート

2020年2月19日 18時開場 19時開演
東京芸術大学 音楽環境創造科
千住キャンパス・第7ホール
〒120-0034 東京都足立区千住1-25-1

入場無料 予約不要

概要

純粋に音楽のみのためにAIを用いてどのような新たなアイデアを見つけて作曲できるか?音楽音響創造科では今年度、「l.AI ve electornicspace> ーAIとライブエレクトロニクスの空間」というテーマをもとに研究が行われた。

この前の2020年1月15日に、東京芸術大学、IRCAM、東京大学と合同で行われた研究会「人工知能と作曲2」では、システム開発側と作曲家側の両観点から、音楽とサウンドに適用される人工知能の最新の開発について再考し、それぞれの分野における共通する課題と新しい可能性についても議論した。

研究会で発表された内容について、こちらのサイトからご覧ください。https://github.com/adrienchaton/seminar_geidai_AI_Music

今回のコンサートは、研究会における課題の続きとして行われる。

前半の作品に関する研究と創作について、作曲家達は、 AIの技術だけに関する開発、理論的な研究は主眼ではない。AIによって作曲を行い、それを楽譜化して人間の奏者に演奏してもらうことにも限定した。そこでは同時にコンピューターがステージ上で用いられることはないし、インターネットやサウンド・デザインなどの他の要素を使用することも全く避けた。 後半で発表される作曲家達は、ライブエレクトロニクスの空間性がどのように人間の芸術を豊かにし、音楽の新しいパラダイムを提示できるのかというテーマを中心に作品創作を行った 。

Program

<演奏の前に作曲家本人が演奏される楽曲についてお話します>
 満潔 Enchanted リコーダーと弦楽四重奏のための
 田村文生 Liederkreis バスクラリネットのための
 顧昊倫 月面 II リコーダーと弦楽四重奏のための


休憩

 姜信愛 BREATH ヴァイオリンとライブエレクトロニクス 
 後藤英 Duali II  リコーダーと弦楽四重奏のための
 福島諭 patrinia yellow クラリネットとコンピューターのための (2013)

Program Note

作品名:Duali II / 後藤英

AIで作曲する(または厳密には自分に取って代わって作曲をしてもらう)にあたって、あえて人間の脳で考えて作曲をする行為と対比することを考えた。そこで、どうしても人間にはできないことで、AIにできることは何かを優先に考えた。通常、作曲は一人で行うものであり、複数で行うことはまずない。

ここで言う意味は、部分に分けて複数の作曲家がそれぞれのセクションを分担しながら作曲することや、一人が作曲してもう一人がそれを編曲するような意味ではない。趣向や技術が全く異なる二人の作曲家が、一つの音楽を感覚レベルで共有しながら同時に作業を行うような意味である。別の言い方をすれば、インターネットのように人間同士の頭や心はケーブルでつなぎ合わせることは当然のことながら不可能である。

そこで、言語によるコミュニーションの手段を取るしかない。いささかサイエンス・フィクションの映画のような話ではあるが、もし趣向や技術が異なる二人の作曲家が本当に頭をケーブルでつなぎ合わせて、しかも二人の能力で一つの作曲ができることになれば、多分、相当なことになるだろう。 この作品では異なる人格を想定した作曲家、つまり二つの異なる頭脳を想定したAIをコンピューター上で作り、それらの共同作業で一つの作曲をすることが試みられた。ある例で例えるならば、一人は複雑な作曲を試みる人格で、もう一人はクラシック音楽が嫌いな人物、または、一人は斬新な音楽を作曲する人格で、もう一人は音楽に対して興味ない人物、のような対比するよりは全く異なる想定の仕方である。具体的にはAIのコンストレイント・プログラミングで複雑な音楽データーを生成するが、もう一人は強い個性を持ったAIがパターン認識して嫌いな部分をフィルターしていく、その抽出されたパターンをさらに別の人格の相手が評価、学習して、新たにリミックスしていく方法である。

作品名:月面 II / 顧 昊倫

この曲は『月面』シリーズの第二曲であり、破片と粒子をテーマとして書いてきた作品である。自分の居場所と遠く離れていて、放射線だらけの不毛な地。極めて静かから生まれた心の声を音楽になると考えて。 楽音より、もっとノイズのような一定の音高のない「効果音」で表現できる特殊奏法を使い、「効果音」そのものを中心に、音楽全般の構想を立てた。そのため、一部の考えやモチーフが出来た上、人工知能に基づいたOMaxを使って作品構想への手伝いをし、展開させたことである。

作品名:Enchanted / 満潔

今回は人工知能と作曲という研究テーマにおいて作品制作を行った。Open Music、Max/Msp、Omax、Audio Sculptといったソフトウェアを使い、作曲プロセスの初期段階における音の構造、作品の構造と関連した自動生成システムや、作品の展開における音楽の自動生成システムを、作曲する過程で色々試してみた。

モンゴル民族音楽の録音素材や日本で録音した音楽素材をAI技術と結びつけて作品の中で多様な響きを生み出すことによって、今回の研究テーマとこの作品のコンセプトを実現しようと試みした。

作品名:BREATH /姜信愛 

この作品はGoogle TensorFlow のMagenta:An open source research project exploring the role of machine learning as a tool in the creative process.を用いて作った曲である。マシーンラーニング技術を使って生み出された旋律に作曲家の手を加え、完成させた作品である。 

作品名:Liederkreis — バスクラリネットのための / 田村文生

この作品は、比較的長い周期を持った反復と、内部での音の蓄積と絡み合いによって構成されている。「過去」を記憶に頼らす、かつより具体的に呈示している分だけ聴く者に対して「記憶しないこと」を強制することとなる時、音楽はどのように聴かれるか?

タイトル“Liederkreis”(歌の環)は、歌の連鎖であると同時に、歌に囲まれた空間を暗示するものでもある。

作品名《patrinia yellow》for clarinet and Computer(2013)/ 福島諭

「美しさ」は何処に宿るのでしょうか。なぜ人は花に美しさを感じ、また一方で、音楽に美を感じるのでしょうか。極めて素朴で根源的な問いの中で、植物における生命のあり方とライブ・エレクトロニクスを援用した室内楽のあり方における類似点を意識するようになりました。

オミナエシ(女郎花)の生命の周期を模するように作曲法から検討し、クラリネットの旋律が「花茎の成長」「開花」「衰退」に擬え構築されるよう試みています。

Composer

後藤 英

准教授/作曲
作曲家、ニューメディア・アーティスト。国際的に評価されており世界活地で活躍。仏、英、独、日の4カ国語を巧みにこなし、新たなテクノロジーと関連させた斬新で刺激的な作品を世界中を発表している。作曲をアメリカ・ボストンのニューイングランド音楽院にて、アール・ブラウン、ロバート・コーガン、ルーカ   ス・フォス、ドイツのベルリン芸術大学では、ディーター・シュネーベル、フランスではIRCAMにてトリスタン・ミュライユとブライアン・ファニーホウに学ぶ。フランス、IRCAMの招待作曲家、研究員、ボルドー芸術大学の准教授を経て、2017年の東京芸術大学に就任。1995年、マルティ・メディア・オペラ作品、”NADA”がベルリンのシャウルシュピール・ハウスにて演奏される。同年より、IRCAMにてコンピューター音楽を研鑽し、その後、研究員として、ジェスチュアル・インフォマティックの開発に携わる。2000年、東京フィルハーモニによりオーケストラ作品”ResonanceII”がオーチャード・ホールにて初演された。2003年、IRCAMのレゾナンスのフェスティバルでポンピドゥー・センターにてソロ・リサイタルを行い好評を得る。2006年、イギリスのAVフェスティバルより委嘱され、作品は話題となった。 2009年にはイタリア、第53回ヴェネツィアビエンナーレに招待された。著書に『Emprise~現代音楽の系譜から、コンピューター・ミュージック、エレクトロニック・ミュージック、ニュー・メディア・アート、新たなパフォーマンスへの進化』(2016年、スタイルノート)がある。http://gotolab.geidai.ac.jp

顧 昊倫

1994年11月中国の蘇州市生まれ。高校一年より作曲を学ぶ。 2017年上海音楽学院音楽デザインと制作科を最優等の成績で修了、現在、2018年より東京藝術大学大学院音楽音響創造科修士課程に在籍。これまでに作曲を秦毅、尹明五、陳強斌、西岡龍彦、後藤英の各氏に師事。





満 潔

内モンゴル大学芸術学院音楽科ピアノ専攻を卒業。同大学院音楽研究科修士課程音楽学(作曲分野)を修了。2011年から日本留学。愛知県立芸術大学を経て、東京芸術大学大学院に入学.2014年東京芸術大学大学院音楽研究科修士課程作曲専攻を修了.現在は同大学院の音楽音響創造科博士後期課程に在学中。
作品はアジアの管弦の現在3(2015)、Joint-WOCMAT-IRCAM Forum Conference(2016)、SICMF(2017)、SMC(2018、2019)、ICMC(2018、2019)などの国際音楽祭で演奏している。
近年はコラボレーションのための音楽なども手がける。本とCDのための作品「痕跡」は東京藝術大学美術館賞(2014)を受賞、作品所蔵。室内アンサンブル作品を中国国家芸術基金(2018、2019)に入選。
これまでに作曲を李世相、郭偉国、山本裕之、中村典子、野平一郎、西岡龍彦、後藤英の各氏に師事。

姜信愛

韓国生まれ。武蔵野音楽大学において飯島英嗣氏のもとで作曲を学ぶ。 Dongguk University (SEOUL,KOREA)GRADUATE SCHOOL OF DIGITAL IMAGE AND CONTENTSにおいてコンピューター音楽をJUN KIM氏に師事。作曲家、メディアアーティスト、映像音楽など幅広く活躍している。現在、東京芸術大学音楽学部博士課程において後藤英氏に師事。







田村文生

東京藝術大学大学院およびGuildhall School of Music and Drama, London大学院修了。Vallentino Bucchi国際作曲コンクール、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞、国立劇場作曲コンクール、ジェネシスオペラ作曲賞などに入選・入賞。作品は、アジア音楽祭、東京の夏音楽祭、Festival Angelica、ISCM(香港)、テグ国際現代音楽祭、Klangwerkstatt Berlin Festival für Neue Musik等など、各地で演奏されている。また現代音楽演奏団体Ensemble Contemporary α代表として現代音楽の演奏会の企画制作にも携わっている。 日本作曲家協議会、日本電子音楽協会、日本音楽学会各会員。日本管楽芸術学会理事。




福島 諭

1977年新潟生まれ。IAMAS修了。作曲家。2002年よりリアルタイムなコンピューター処理と演奏者との対話的な関係によって成立する作曲作品を発表。Mimiz、gpのメンバー。濱地潤一氏との共同作曲作品《変容の対象》は2009年元旦より開始され現在も進行中。賞歴に《patrinia yellow》第十八回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞など。G.F.G.S.Label。作曲を三輪眞弘氏に師事。











Performer

鷹羽弘晃/指揮

 2001 年桐朋学園大学作曲理論学科卒業。パリ・エコール・ノルマル作曲科Diplome Supérieur 取得。第68 回日本音楽コンクール作曲部門入選。室内楽や合唱を中心に作品多数。アール・レスピラン、東京混声合唱団、日本音楽集団、Ensemble Alternance などによって演奏されている。ピアノ演奏、指揮者でも活動中。現在、桐朋女子高等学校音楽科教諭(ソルフェージュ部会所属)。






鈴木俊哉/リコーダー

アムステルダム音楽院卒業。リコーダーを花岡和生、W.ファン・ハウヴェに師事。リコーダーの可能性と技術の開拓に 取り組む。L.コーリ、B.ファーニホウ、L.フランチェスコーニ、原田敬子、細川俊夫、伊藤弘之、野平一郎、S.シャリーノ、湯浅譲二といった作曲家たちと共同作業をおこない、彼等の作品を初演する。
ウィーンモデルン、チューリッヒ新音楽の日、ガウデアムス、ダルムシュタット、ISCM世界音楽の日々、秋吉台、パリの秋、武生、ロワイヨモン、コンポージアム、ヨーロッパ・アジア国際現代音楽祭、クランクシュプーレン、トンヨン、フェスティバル・ア・テンポ、メルボルンR.C.オープニングフェスティバル、ルーマニア国際現代音楽祭、アジアーゴ音楽祭、サントリーサマーフェスティバル、中国-アジア音楽週間、ニュージーランド・フェスティバル、Etching Festival、Melos-Ethos Festival等の音楽祭にソリストとして参加。ヨーロッパ、アメリカ、アジア各地で現代奏法に関するワーク ショップやリサイタルを行う。 ’02年のダルムシュタット夏期講習会講師。東京都交響楽団、セントラル愛知交響楽団等と共演。また、京都府教育委員会の派遣講師「夢大使」として子供たちにもリコーダーを教え、京都府の各小学校だけでなく、国内や台湾の小中学校でも教える。ソロCD「Tosiya Suzuki Recorder Recital」はドイツの音楽ジャーナル、音楽と美学協会よりMusic & Ästhetik Interpretationsprize 2003を受賞。他に、名古屋市民芸術祭賞、ダルムシュタット奨学生賞、クラーニッヒシュタイナー音楽賞、中島健蔵音楽賞、創造する伝統賞、佐治敬三賞を受賞。エリザベト音楽大学特別講師。 www.tosiyasuzuki.com

鈴木生子/クラリネット

桐朋学園大学附属子供のための音楽教室、東京都立藝術高校音楽科、東京藝術大学音楽学部卒業後、ニューヨークのマンハッタン音楽院にて修士号及びプロフェッショナルスタディーズコース、アムステルダム音楽院にてポストグラジュエートコースを、また同音楽院にてバスクラリネットも専攻し、修士号を取得。クラリネットを二宮和子、竹森かほり、村井祐児、鈴木良昭、チャールズ・ナイディック、大島文子、ハルメン・ドゥ・ブア、バスクラリネットをハリー・スパルナーイの各氏に師事。自分のカラダの動きを自分で探るフェルデンクライスメソッドと出合い、その探っていく面白さや自分の変化を実感。2003 年オランダで指導免許を取得し、現在そのレッスンも開いている。オブロークラリネットアンサンブルのメンバー。東京工業大学管弦楽団の木管トレーナー。東京都立総合芸術高校講師。




佐藤まどか/ヴァイオリン

東京藝術大学附属高等学校、同大学、同大学院博士後期課程修了。この間イギリス、オーストリア、フィンランドにて研鑽を積み、2005 年、シベリウスの研究で博士号を取得。第7 回シベリウス国際コンクール第3 位入賞をはじめとして、第44 回プラハの春国際音楽コンクール特別賞受賞、第5 回ヴァクラフ・フムル国際コンクール第2位( 最高位) 入賞、第13 回リピッツァー国際コンクール第4 位(1 位なし)入賞。ALM よりシベリウスのヴァイオリン作品集vol.1『子守唄』、vol.2『ノヴェレッテ』、BIS のシベリウス全集にヴァイオリンコンチェルトの世界初録音をリリース。現在、ソリストとしての活動を中心に、室内楽や現代作品の初演など多彩な演奏活動を展開し、的確な洞察力と豊かな表現力は国際的にも高い評価を受けている。上野学園大学講師。日本シベリウス協会理事。



花田和加子/ヴァイオリン

英国オックスフォード大学音楽学部卒業。王立音楽カレッジのディプロマを取得。帰国後、東京藝術大学大学院修士課程を修了し、同大学院博士課程にて学ぶ。ヴァイオリンを石井志都子、李亮才、ジョルジュ・パウク、澤和樹の各氏に師事。第3 回ストラディバリウス・コンクール入賞。1999 年度村松賞受賞。アンサンブル東風、アンサンブル・コンテンポラリーα、アンサンブル・ノマドのメンバーとして、古典から現代曲まで幅広いレパートリーで演奏活動を行う。また、(財)地域創造公共ホール音楽活性化事業コーディネーター、東京藝術大学、及び桐朋学園芸術短期大学にて非常勤講師を務める。






安藤裕子/ヴィオラ


東京藝術大学大学院修士課程修了。第3 回日本室内楽コンクール第1位。同年第17 回ヴィットリオ・グイ国際室内楽コンクール最高位。第52 回ジュネーブ国際コンクールセミファイナリスト。東京シティフィル首席奏者を務めた後、現在芸大フィルハーモニア管弦楽団首席奏者。各地の音楽祭への参加、オーケストラ首席奏者としての客演など、活動を続けている。東京藝術大学、洗足学園、聖徳大学非常勤講師。







廣田碧/ヴァイオリン

三重県桑名市出身。名古屋市立菊里高等学校音楽科を経て、東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。
これまでにヴァイオリンを佐藤美穂、林茂子、浦川宜也、清水高師、Sungsic Yangの各氏に、また室内楽を東誠三、市坪俊彦、野口千代光、林俊昭、松原勝也の各氏に師事。
みえ音楽コンクール、横浜国際音楽コンクール、岐阜国際音楽祭コンクールほか優勝・入賞。三重県知事賞、岐阜県知事賞受賞。NHK名古屋青少年交響楽団OG。
東京藝術大学130周年記念事業で英国王立音楽院(RAM)との交流事業に参加し、合同オーケストラとしてロンドンやオックスフォードにて演奏。2019年岐阜国際音楽祭において愛知室内オーケストラと共演。そのほか演奏会やレコーディング、ライブサポートなど、ジャンルや様式を問わず各地で演奏活動を行う。

松本卓以/チェロ

東京藝術大学卒業、同大学院修了。在学中に福島賞受賞。藝大定期にてサン= サーンスのチェロ協奏曲を協演。現在はバロックから現代、タンゴまで幅広い演奏活動を展開している。特に現代音楽の分野では作曲家との共同作業に力を入れており、これまでに250 曲を超える初演を行ってきた。またガウデアムス国際現代音楽祭(オランダ)をはじめ、国内外の現代音楽祭に多数出演している。クァルテット・アルモニコ、エレメンツ・クァルテット、アンサンブル東風、小松亮太&オルケスタティピカのメンバー。アンサンブル・ノマドレギュラーゲスト。2001 年より藝大フィルハーモニア管弦楽団に在籍。東京藝術大学管弦楽研究部及び弦楽科非常勤講師。