Dissolution /伊藤寛武

コンサート作品

演奏:
フルート 伊藤 寛武
クラリネット 島田 優香
ヴィオラ 叶澤 尚子
コントラバス 大森 優華

《Dissolution》は6人の奏者による室内楽作品であり、部分的には、ライブエレクトロニクスも使用されている。

初めこの曲を作曲する際には「曖昧さ」という言葉を念頭においた。楽曲の中にはこの言葉を捉えようとする軌跡が現れているように思う。曲名には分解、融解という意味がある。硬いものが、空間の中に溶け出て行く、あるいは弾け飛んでいくようなイメージを表した。

この曲は5つの部分から構成されている。 3つ目の部分は三部形式になっており、全体の転換点となっている。1つめと5つめ、2つめと4つめの部分は、それぞれテンポと拍子が対応し合っている。

第一部 遅いテンポで、ピアノとその他の楽器が対立して用いられている。初めピアノに現れるのが1つ目のテーマ。旋律的に、また和音の形で曲中何度も現れる。その後フルートが2つ目のテーマを吹く。その裏でピアノには部分的に残響が付加される。

第二部 速い3拍子によるスケルツォ風の音楽。コントラバスとピアノによるパターンが現れるが、フルートとクラリネットにより中断される。

第三部 再び遅いテンポをとる。始めは、クラリネット、ヴィオラ、コントラバスによるコラール風の音楽になっている。中間部ではシンバルに、残響が付加されている。その後、始めの部分の繰り返しになるが、フルートが加わり、メロディーの音程が拡大され全音階的になっている。

第四部 速い8分の6拍子による部分。前半はピアノによるパターンと、その他の楽器の対話になっている。後半は2つ目のテーマが現れ最後の部分への移行部となっている。

第五部 ヴィオラの完全5度の重音から引き継いで、最後の部分が始まる。ピアノはここでは演奏しない。遅いテンポのコラール風の部分で、フルートに1つめのテーマ、コントラバスに2つ目のテーマの断片が再現されている。