PUSHIT / 坂本沙織

コンテンポラリーダンス作品

個人が瞬時に日本中、世界中に情報発信出来る現代では、人間は常に視線というストレスに晒されている。 人の視線、そしてその先にあるデジタルカメラやケータイカメラといったツールとメディア、ウェブを通して、今ここにある身体は不特定多数の人間に共有され常に監視されている。

「誰かの隠している何かを暴いてしまいたい」と思う、狂気の様な欲求がもしそこに存在すれば、その欲求が集団になった時には、視線の先にいる誰かを殺してしまうだろう。この作品は「見ること」「見られること」をテーマにダンサー5人でワークショップを行い、その関係性から生まれる仕組みと、人の視線に晒される身体の状態を探りながら制作された。

監視する側とされる側が相互的なものであるように、「見る側」と「見られる側」の関係性の仕組みと身体の状態は常に入れ替わって行く。また、写真に撮られるたび女性がバタバタと倒れていくような象徴的なムーブメントが繰り返され、だんだんに説得力を増していく。ムーブメントの一つ一つではなく全体を通して流れる意識が、人の視線がどこへ向かい、人をどのように変えるのかを探らせ、人が誰しも持っている無意識上の狂気に改めて気づかせてくれたら良い。