プロデューサー型市民大学についての考察
――シブヤ大学、丸の内朝大学、自由大学を事例に――

角谷七瀬/卒業論文

 最近、市民大学と呼ばれる分野の中で新しい学びの場づくりがはじまっている。市民大学とは、正規の教育機関の大学ではなく、生涯学習や自己啓発のためにさまざまな組織が運営している成人の学びの場である。本論では、その中でも最近脚光を浴びているシブヤ大学、丸の内朝大学、自由大学という3つの新しい市民大学に着目した。
 これらの市民大学は一体何が新しいのか、何が画期的なのか。そのカギは専属の「プロデューサーがいること」にあるのではないか。
 本論では、市民大学におけるプロデューサーとはどのような役割を担っているのかを知るため各市民大学のプロデューサーおよびプロジェクトメンバーに対してインタビュー調査をおこない、その上で市民大学におけるプロデューサーの特徴とその有効性を検証した。また、ここ10年で盛んに必要性が叫ばれている「プロデューサー」という役職について、事例を挙げながらその実態の多様性や特徴についても言及した。
 プロデューサーとはプロジェクトにおける総責任者であり、その特徴はいくつも挙げられるが、特に市民大学において機能しているプロデューサーの特徴は、①価値観の変革者である点、②分野を超えた専門家を集めてプロジェクトチームをつくる点、の2点であった。モノではなくライフスタイルや経験を創造すること、「学問」でも「お稽古ごと」でもない学びを提供すること、という新しい価値観を提示し、何を学ぶかではなくその先に各市民大学の在り方を設定しているのである。そして各分野の専門家を集めて有機的にプロジェクトを動かしていくことで、シブヤ大学は“まちのネットワーク”として、丸の内朝大学は“社会人のコミュニティ”として、自由大学は“生き方の気付きを与えるプラットフォーム”として存在することに成功している。
 人々の学びへの関心とプロデューサーへの社会的な期待は今後ますます強まる傾向にあるだろう。今後の動向に期待したい。

profile

角谷七瀬:プロジェクト2所属。
人が集まる仕組みをつくること、学びの場をつくることに興味を持ち、大学では文化環境研究を専攻。同時に、リズムをテーマにさまざまな事業を展開するプロジェクト「Rhythm Circus」の代表を務めている。http://r-circus.com/