変身

石田晶子/舞台作品

 本作品は、変身をテーマにした舞台作品である。
 何故今の自分になってしまったのか、それを決定づけたのは何なのか、それが分からないまま私たちは絶えず変身を重ねて生きているのではないか。今ここにある存在そのものに対する疑問から、この作品への取り組みは始まった。
 変化や変質といった事柄は、人間の身体だけではなく、その内面や関係性にも見出せることであり、また動物や植物、他のあらゆる存在において普遍的なことである。外見の変化、身体感覚の変化、関係の変化、意識の変化、無意識の変化などといった、様々な変化を二人のパフォーマーの身体で演劇的・ダンス的に提示しようと試みた。
 本作品ではフランツ・カフカの小説『変身』を題材に、日常的な表現とと非現実的な表現を織り交ぜ、変身のモチーフを繰り返している。この小説は、「ある朝グレーゴル・ザムザが何か気がかりな夢から目をさますと自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。」という、印象的な一節から始まる。
 筆者は『変身』に描かれている、今まで築かれていたものが少しずつ崩壊し変化していく情景に心を奪われた。昨年の卒業制作公演においては、この情景をもとに舞台作品を作るにあたり、今まで覆い隠されていた内面で起きていた破壊を暴いて変身した次の新しい存在に行きつくために、パフォーマーの肉体を激しく踊らせて消耗させ、取り繕えなくさせるという手法を用いた。

profile

石田晶子:プロジェクト4所属。
愛知県出身。古武道や器械体操、シアターダンスなどを経て大学からコンテンポラリーダンスを始める。在学中に明治座アカデミーを修了し、時代劇を経験する。エネルギーいっぱいの動的なダンスが得意。昨年は「渋さ知らズde怖いもの知らズ―池袋大作戦―」「豊島区在住アトレウス家」等に参加。