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――オーディオドラマに於ける聴き手の視点『音による人称表現』ドラマ――

黒岩若菜/5.1chサラウンド+2chヘッドフォンによるオーディオドラマ上演

 『聴き手の視点が、物語内のどこに位置付くか』に注目したオーディオドラマ(音のみの物語)である。聴き手の視点の違いを〈音による人称表現〉という考え方を用い、音の一人称視/二人称視/三人称視の3つの短編で、視点表現を行う。

〈音による人称表現〉
 人称の設定は、小説同様にオーディオドラマに於いても、聴き手が物語をどのように聴けばいいかを意図するために必要である。テレビドラマや映画のカメラワークを考えると分かりやすい。筆者は、主人公の目線から表したものを「一人称視点」、主人公以外の作中人物の目線を『二人称視点』、それ以外を「三人称視点」と呼ぶ。
①一人称視
聴き手の視点は、主人公の視点に固定化されている。聴き手が自身を主人公に置き換えて感情移入する類である(図1)。主人公の台詞(声)がほぼ無い『からっぽの主人公』である場合がある。
②二人称視
聴き手の視点は、主人公に対応する相手〈君〉の視点に固定化されている。主人公に語り掛けられることで、ストーリーが進行する(図2)。この場合、聴き手は『からっぽの作中人物A』であることが多い。主人公は台詞を持ちビジュアル化されるが、相対する聴き手は台詞を持たず、人物像を想起できない。
③三人称視
聴き手の視点は、主人公や『君.あなた』以外の第三者の視点である。一人称視や二人称視と異なり、視点を特定人物1人に固定しない。よって、複数の作中人物の間を自由に行き来できるタイプ1がある。または、物語の外から場面を風景として楽しむ、あるいは『聴いている』という現状に立ち返るタイプ2がある(図3)。

profile

黒岩若菜:プロジェクト3所属。
福岡県久留米市出身。夢タウン久留米の紀伊国屋にて音楽大学•学校案内2006(音楽之友社)を購入し、当学科と出会う。映画やアニメーションのサウンドデザインを中心に音響制作を行っている。心情=音の起承転結。得意技=カットアウトまでの盛り上げ。キャッチコピー=〈貴方の黒み、活かします〉。