「ヴィジュアル系」の海外受容と定義の変化

吉田みさと/卒業論文

 「ヴィジュアル系」とは1990年代後半に流行、特定のミュージシャンを指したした造語である。流行当時のヴィジュアル系はメディアの話題となり、さまざまな議論を呼び起こしたが、やがて影を潜めた。2011年現在、ヴィジュアル系が海外で注目を浴び、再び話題にのぼるようになった。ヴィジュアル系は「Visual-kei」として世界共通語となりつつある。国内で衰退した流行が、なぜ海外で再評価されているのだろうか。
 筆者はNHK国際放送J-MELOと東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科毛利嘉孝研究室によっておこなわれた『J-MELO RESEARCH』を通じて、海外でヴィジュアル系を好むリスナーの意見を分析した。海外ファンのヴィジュアル系を聴くようになったきっかけや、日本に対する興味の調査結果を考察していくことで、ヴィジュアル系は日本性を感じる様式美として捉えられていることが明らかになった。
 では、ヴィジュアル系と日本の文化にはどのような関連性があるのだろうか。海外が注目する日本の文化を、伝統文化と、近年のサブカルチャーとに分類し、それらとヴィジュアル系の特徴との関連性を考察した。化粧、衣装、音楽、歌詞などのさまざまな観点からヴィジュアル系の特徴を述べ、それと日本の文化との関連性を見出していくことで、ヴィジュアル系には多くの型が存在し、その型が日本の美意識や思考を特徴づけるものと深く結びついていることがわかった。それらが海外に受け入れられる日本性と合致しているため、日本の音楽の中でもヴィジュアル系は特に注目されている、と筆者は結論づける。
 そして、海外からの評価を受けて、現在のヴィジュアル系は変化を続けている。今後ヴィジュアル系は、日本の閉ざされたファンを対象にした音楽産業の一部としてではなく、日本のポップ・カルチャーを代表するひとつのコンテンツとして意識されていくべきである。

profile

吉田みさと:プロジェクト5所属。
大学卒業までの経歴でありとあらゆる「やっちゃった」と「うううでもあきらめませんがんばります」を繰り返したことが現在のまあるくやわい横顔ににじみでている。老後の笑い皺を1本でも増やすことが今後の目標。そのために、興味関心に近い本と音楽は欠かさない。はいやあ。