藤井友理/舞台作品
『re-mind』は観客の鑑賞行為を中心に進行していく舞台作品である。
本作鑑賞時には、知識や特別な見識は必要ない。むしろ個人的な前提を持ち込んではならない。舞台上に起こること、配置するもの自体に意味や意図を含まず、観客の知覚対象としての出来事や事物を構成した。そのため、知覚行為が内容理解のための手段ではなく、行為そのものが目的となるよう、鑑賞しているその場その時のみで作品が完結することを目指した。
制作の目的は、観客に「見ること」「聞くこと」そのものに専念させることである。作品内に込められた作者の意図などを読み取ってもらうという「作る」ことに重きをおいたものではなく、観客に「見せる」ことを重視し、観客の純粋な知覚行為を引き出すことを軸としたものである。
本作では、知覚行為を「見る」「聞く」の2点として進行させた。知覚の対象として用いる要素は、人・音・光の3点であり、前提としてこの3点は優劣なく平等に扱う。出演者である人の存在についても例外はない。上演中、これらの中から全編を通した中心要素は置かず、あくまで鑑賞者に知覚の対象を与えるために、この3点のいずれかを都度有効的に配置。その配置により、観客が鑑賞することで作品が成立するしくみを構成した。
『re-mind』は、観客個人が作品を鑑賞し感想を抱くプロセスで、内容理解を作品評価の判断基準としない鑑賞法の提案である。